新町みんな食堂
長岡の「食堂」の原点がここに!
熱気あふれる「新町みんな食堂」
毎月第3金曜の夜、こんもりした緑に包まれた由緒ある金峯(きんぷ)神社の一角に食堂がオープンする。17時ごろ到着すると、ちょうどボランティアの女性たちが料理の真っ最中。キッチンからおいしそうな匂いが漂ってくる。
キッチンを覗いてみるとエネルギーが満ちあふれ、「あれ、もう茹でた?」「こっち先にやろうか」「コンロもうすぐ空くからね!」など言葉が飛び交う。
会場では、当日の13時から15時ごろまで食材の提供を受け付けている。14時ごろから集合するスタッフが集まった食材を見て「今日はなに作ろうかねぇ」と相談し、バランスを考えながらメニューを決めていくという。この日は地元の農家、スーパー、フードバンクにいがた、ライオンズクラブなどから食材が提供されていた。
運営に当たる世話人会代表の佐竹直子さんは、「『なに作るか決めてないけど、とりあえず大根の皮をむこう』とか『私はジャガイモをやるわ』とか、毎回そんな感じで始まります」と笑う。
佐竹さんは近隣の「蔵王のもりこども園」園長でもあり、子育てを当事者だけでなく地域や社会の多世代と共に行おうと、中越地震を契機にNPO法人「多世代交流館になニーナ」を立ち上げ、育み合える場づくりに尽力してきた。地域で活動する中で家庭の孤立や貧困など様々な問題に触れ、「長岡にも子ども食堂がほしい。すべて解決できなくても、食堂があることで少し楽になる人もいるのでは」と一念発起。ネットワークを駆使して各所に協力を呼びかけ、保育関係者や地域の児童委員らと共に世話人会を組織し、新町みんな食堂をオープンした。
「予約を取らないから何人来るのかわからなくて。足りなくなったらスパゲッティを茹でるとか、工夫しながらやってます」と佐竹さん。「子どもたちに『あー!そっちのほうがいい!』って言われたりしてね(笑)」
キッチンでは次々に料理が完成し、盛り付けがスタート。熱気が最高潮に達し、スタッフはてんてこ舞いだ。
今日のメニューは焼き鳥、春雨の中華サラダ、野菜たっぷり味噌汁、ナスのキーマカレー、油揚げ・シシトウ・ナスの煮物、野沢菜とナスの浅漬け、季節のフルーツ、イチジクジャム。贅沢なワンプレートが出来上がった。
食事開始の18時が近づくと、赤ちゃんや幼児を連れたお母さん、高齢の親を伴う人などが続々と集まり始めた。まずは受付で名前を書き、大人も子どもも1人100円の参加費を支払う。
盛り付けられたプレートを参加者も協力して和室へ運び、全員に行き渡ったタイミングを見計らって佐竹さんが食材の提供者を紹介。「みなさんにいただいた食材を使って、ボランティアさんが愛情たっぷり込めて作ってくれて、今日のおいしい食事が出来上がりました」。みんなで感謝して「いただきます」と声を合わせる。
「食堂は人と人をつなぐ手段で、食事をしながら助産師資格を持つスタッフに悩みを話して安心するお母さんたちもいます。子どもたちはお皿を運んだり、ほかの人の分も持ってきてもらったり、お手伝いを通じて支え合うことを学ぶ場にもなればいいですね」(佐竹さん)
この日の参加者は60人以上。多いときには100人にもなるという。 「毎月とても楽しみにしているの。家ではひとりだから、みんなと食べるとおいしいわね」と言うおばあさん。家では好き嫌いがあるのに、ここではなんでも食べるという子どもたち。知識と経験豊富なスタッフに育児相談をするお母さん。赤ちゃんからお年寄りまで多世代が集い、語り合いながら共に食べる風景は大家族の食事会のよう。にぎやかな笑い声がいつまでも食堂にあふれていた。
出典:長岡市,な!ナガオカ,「「子ども食堂」から「地域食堂」へ。温かい食事がつなぐ世代とコミュニティの絆」